第1回で「コンテイジョン」がキテる!話をしましたが、
でも「コンテイジョン」ってどんな映画という人もいますよね?
なので、せっかくですから「コンテイジョン」も解説しちゃいましょう。

「コンテイジョン」の映画基本データ

映画「コンテイジョン」(2011年)
監督:スティーブン・ソダバーグ 
脚本:スコット・Z・バーンス 
撮影:ピーター・アンドリュース 
編集:スティーブン・ミリオン 
出演:マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン他

「コンテイジョン」のあらすじ

香港出張を終え、シカゴで愛人と情事を終えたベスは、夫の待つミネアポリスへ戻った彼女は、熱を出した上に痙攣を起こしてあっという間に死んでしまう。気がつくと彼女と接していた息子も突然死を起こして、夫であるミッチ・エムホフ(マット・デイモン)はただ事でないと感じ始める。
その頃から世界各国で同様な症状で死んでいく人が増えていき、CDC(疾病予防管理センター)やWHO(世界保健機関)のスタッフがワクチン開発や疫病拡大阻止に奔走していく。
果たして感染を止められるのか。?
ミッチ・エムホフ(マット・デイモン)の家族はどうなっていくのか?

「コンテイジョン」の解説(ネタバレにつきご注意ください)

この映画、いくつものストーリーが同時に進む形で様々な家族や人間を描きながら、感染病系の映画にありがちなホラー描写やヒステリックな表現はなるべく避けています。
それがかえってリアルに見える映画かもしれません。

注目すべきは、女性たちの強くたくましい行動力!
進んで危険な医療や研究の現場に立ち向かう姿。
中でも医師エリーを演じるジェニファー・イーリーの沈着冷静で、献身的なまでの使命感。
それがもたらす崇高さ—ラボで防護服に包まれた彼女の、静謐な立ち姿!—は実に美しいです。

彼女たちの頑張りに対して、男性たちはどちらかとういうと情けない!
奥さんに不倫されちゃうマット・デイモン
嘘もまき散らしながら自分のことしか考えていないフリー記者役のジュード・ロウ
身内だから大丈夫と重要な事を奥さんに教えちゃうCODのお偉いさんローレンス・フィッシュバーンなどなど。
男性は名誉や欲を守ることにどっぷりだし、単純な行動しかできない。
いつもはマッチョな役の多いマット・デイモンは、オヤジ太りというややだらしないし、感染して亡くなった妻が実は不倫していたなど、とにかくダメダメ。
かろうじて感染病の免疫があって助かったのが救いだね。

この映画がとってもうまいのは、感染病の防止のための隔離がかえってモラルや権力のバランスを崩して騒ぎを起こしてしまうという、今僕たちが現実に見ているようなことが、ここでもしっかり描かれています。
しかし多くの努力によって病の危機を超えることで、次第に家族や人間の絆がくっきり残るように持っていくあたりもさすがです。

また、全体的に冷たい青色を基調とした色彩と、時期が冬という冷たい感覚をもたらす色彩的な演出(だからこそ、ラストの、マット・デイモン宅でのささやかなプロムのお祝いの華やいだ電飾—崩れた関係が元に戻っていく象徴—が際立つのです)もお見事でした。
そうそう、そのプロムのお祝いの場で流れるのが、U2の「All I Want Is You」というのも
、元に戻る「関係性」を表していると言っていいでしょう。 

僕たちも、コロナが収束した時にちゃんと人との絆や関係性が守れるように、フェイクに惑わされず、偏見に打ち勝てるようにしたいですね。